セブンスターズコンサルティング株式会社
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■ 代理店都合による商品の推奨は認めない方針 金融庁によるFPパートナーへの保険推奨に関し、立ち入り検査が実施されています。 また、エーオン(ブローカー)による企業内代理店(三菱ケミカルグループ)の買収などが現実化しております。 企業内代理店同士のM&Aも活性化する方向です。 金融庁、生保・損保の「テリトリー制」を廃止へ 代理店都合による商品の推奨は認めない方針 中村 正毅 : 東洋経済 記者 2024/11/26 5:30 金融庁は保険会社による過度な便宜供与の温床となってきた「テリトリー制」を廃止させる方針だ 自動車ディーラーなどが、顧客に推奨する保険会社を店舗ごとにすみ分ける「テリトリー制」について、金融庁は監督指針などの改正によって廃止させる方針だ。テリトリー制をめぐっては、保険会社が不必要な車両や物品をディーラーなどから大量購入するといった「過度な便宜供与を誘引している」(金融庁幹部)との指摘が、かねて上がっていた。特に損害保険業界では、保険代理店を兼ねる一部のディーラーが、損保各社の便宜供与の度合いなどによって推奨する会社を店舗ごとに決定。顧客の意向にかかわらず、その店舗を担当する損保の自動車保険を集中的に販売するという慣習がある。 トヨタ子会社の「推奨保険会社一覧」 金融庁が立ち入り検査に踏み切ったトヨタ自動車の完全子会社、トヨタモビリティ東京では「店舗別推奨保険会社一覧」を、ホームページ上で公開。今年4月時点の同一覧表をみると、約200店舗のうち46%に当たる店舗はあいおいニッセイ同和損害保険が担当しており、32%が東京海上日動火災保険、19%が三井住友海上火災保険、3%が損害保険ジャパンとなっている。そもそもテリトリー制が白日の下に晒されたのは、中古車販売大手ビッグモーターによる事故車修理費用の不正請求問題がきっかけだった。ビッグモーターは、事故車の(入庫)紹介件数や出向者の人数などに応じて、各損保のテリトリーとなる店舗を割り振り、その店舗を担当する損保の商品を顧客に集中的に販売。それがいつしか、損保各社によるテリトリー店舗の争奪戦につながり、ビッグモーターの不正請求を黙認することにつながっていったという経緯がある。一方で、11月に施行された改正金融サービス提供法では、金融商品の販売時に顧客の最善の利益を勘案する「誠実公正義務」を、金融機関や保険代理店などの販売事業者に課した。顧客の意向を置き去りにして、ディーラー側の都合で店舗ごとに推奨する商品を変えるのは、改正金融サービス提供法の趣旨に反する。そのため複数の保険会社の商品を扱うディーラーなどが、店舗ごとに推奨保険会社を定めることは、原則として認めない方針だ。また、金融庁はテリトリー制の抜け穴になりそうな部分についても、監督指針やパブリックコメント(意見公募手続き)を通じて対策を講じる。抜け穴の一つとして懸念されているのが、ディーラーに来店した顧客が、どの損保会社の自動車保険にするか明確な意向がなく、「どこでもよい」と言ってくるようなケースだ。その場合は、ディーラー側が推奨する商品を選び出し、選んだ理由を顧客に説明することになる。一方で、同ケースにおいて現在の規制(保険業法施行規則227条の2第3項第4号ハ、通称「ハ(は)方式」)をそのまま適用すると、どうなるのか。「当社の経営方針としてこの損保の商品を推奨する」などと、「たとえ偽りであっても推奨する理由さえ説明すれば、実務上は問題ないということになる」(金融庁幹部)。 ![]() テリトリー制を許容する根拠となった保険業法施行規則227条の2第3項第4号ハの規定(最下部、金融庁の資料、編集部撮影) 先述したようにビッグモーターでは、便宜供与の度合いによって推奨する損保会社を事実上決めていた。にもかかわらず、ハ方式の規定を利用して「この保険会社の事務に精通している」などと誤魔化した理由を顧客に説明し、自分たちにとって都合がよくなるように、顧客の意向を半ば無視するかたちで商品を推奨していたわけだ。そのため、金融庁はテリトリー制を許容する根拠となってきた「ハ方式」を、施行規則から削除する方針だ。さらに「保険会社はどこでもよい」と顧客が申告した場合は、特定の商品を推奨する理由として、「経営方針」や「資本関係がある」といった代理店都合の理由は認めないこととする。加えて、自動車の利用頻度や保険料の高低をどの程度重視するかといった顧客の属性および意向把握の手続きを厳格化する。その上で、顧客の最善の利益に資すると判断した理由を、ディーラーなどの代理店が説明することを求める方針だ。 抜け穴をふさぐ金融庁の強い意向 金融庁では当初、顧客の意向が不明確なケースでは、従来通りディーラーをはじめとした代理店の都合によって推奨する商品を選び出し、その理由を説明することも実務上はやむを得ないという意見があった。一方で、保険販売の現場では「形式的であっても推奨理由の説明をしていたビッグモーターはまだマシで、推奨する理由すら説明せずに、自動車保険を売りつけようとするディーラーは山ほどある」(大手損保幹部)というのが実情だ。そうした実態を踏まえると、どの保険会社でもよいと顧客があたかも言ってきたかのように装い、これまで通りディーラー側の都合で推奨する損保を自由に差配できるようにするという「潜脱リスク」が拭えない。そのため金融庁は、テリトリー制を実質的に残す抜け穴とならないように、まずは顧客の意向把握手続きの厳格化によって、意向が不明確なことで代理店側が自由に推奨損保を決めることができるケースを極小化。その上で、顧客への誠実公正義務に沿わない単なる代理店都合による商品の推奨は、いかなる場合においても認めないこととすることにした。 中村 正毅 東洋経 上に戻る |