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2021年3月1日に障害者の法定雇用率の引き上げが行われた障害者雇用促進法。 こちらの法律は数多くの法改正が行われ、現在の形になっています。 そこで今回は障害者雇用促進法とはどんな法律かを始めて知る人にも簡単に解説していきます。 1.障害者雇用促進法の概要 障害者雇用促進法は、障害者の雇用の安定を図ることを目的とする法律になります。 具体的には、事業主が障害者を雇用する義務をはじめ、障害のある人に対して職業指導、職業訓練、職業紹介などの方策を定めています。 また前述した通り、障害者雇用促進法は数多くの改正が行われており、1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」が元となっています。 引用:[障害者雇用促進法の概要]厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/03.html 2.障害者雇用促進法での「障害者」の範囲 障害者雇用促進法においては、障害者の定義を「身体障害、知的障害、精神障害、その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう」 と定めています。具体的な範囲等は下記の図でご説明します。 上記の図の内、A,B,Cに当てはまる人が障害者の雇用率の算定対象となってきます。 また、次の章で記載するその他の職業リハビリテーションの推進や差別禁止と合理的配慮の提供義務はA,B,Cの人に限らずD,Eの人も対象となります。 引用:[障害者雇用促進法における障害者の範囲]厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vnm9-att/2r9852000001vosj.pdf 3.障害者雇用促進法の具体的方策 障害者雇用促進法は主に以下3つの具体策があります。 1 障害者雇用率制度 2 差別禁止と合理的配慮の提供義務 3 職業リハビリテーションの推進 3-1障害者雇用促進法の方策①:障害者雇用率制度 障害者雇用率制度とは障害者の雇用の安定を図る為に、障害者雇用率に相当する人数以上の障害者を雇用しなければならないとする制度です。5年に1度、社会の変化を反映するため見直しが行われ、2021年3月以降の事業主別の障害者雇用率は次のようになっています。 ・民間企業…2.3% ・国、地方公共団体等…2.6% ・都道府県等の教育委員会…2.5% ~企業が雇用すべき障害のある方の人数の計算方法~ では、一体何人の障害者を自社では雇用しなくてはいけないのか。 実際に雇用すべき障害者の人数を、障害者雇用率を使って計算してみます。 ・計算式 ➡常用労働者の人数(短時間労働者は0.5人分としてカウント)×法定雇用率(小数点以下は切り捨て) 例:民間企業の場合 常用労働者100人(障害者も含む) 短時間労働者:50人(障害者も含む) (100人+25人)×2.3%=2.875 ➡小数点以下は切り捨てになるので、2人雇用となります。 ですが、障害者を数える際のカウントのルールがあり、障害の重さや働き方によって雇用すべき人数に変化があり、下記の図の通りになります。 先ほどの例に当てはめると、障害者雇用率を達成するには2人雇用が必要ですが、重度の身体障害者を雇用した場合1人で雇用率を満たすことになります。 また2021年12月現在、従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければならない事になります。 引用:[障害者雇用率制度]厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaisha/04.html 3-2障害者雇用促進法の方策②:差別禁止と合理的配慮の提供義務 ここでは障害者に対して差別的扱いをしないこと、合理的な措置を講じることが企業の義務として定められています。 (1)差別禁止 賃金・教育訓練・福利厚生の利用その他の待遇について、障害者であることを理由に差別的な扱いを行う事を言います。 (例) ・単に「障害者だから」という理由で、求人への応募を認めない ・障害者に対してのみ不利な条件を設けること (2)合理的配慮の提供義務 障害者が他の人と平等に生活を行えるように、障害の特性に配慮した措置を講じることを言います。 (例) ・ 車いすを利用する方に合わせて、机や作業台の高さを調整すること ・ 知的障害を持つ方に合わせて、口頭だけでなく文書・絵図を用いて説明すること こちらは事業主にとって過重な負担となる場合には、合理的配慮の提供義務はありませんが、過重ではないのに対応や支援を行わない場合は「差別」と見なされます。 3-3障害者雇用促進法の方策③:職業リハビリテーションの推進 障害者雇用促進法の目的の1つとして、障害者の能力に応じた職業への就労を促し、職業生活における自立を実現することがあります。この目的を達成するために、職業リハビリテーションの推進を行っており具体的には職業訓練や職業紹介などを行っています。 実施機関の代表的な場所として以下があります。 (1)ハローワーク 厚生労働省が全国500カ所以上に設置する公共職業安定所のことです。 障害がある人に対応する専門の相談員が配置されており、職業紹介や求職相談、就職後の職場定着支援などを行っています。 (2)地域障害者職業センター 障害のある人に対して専門的な職業リハビリテーションを提供している施設です。 職業カウンセラーが在籍し、職業評価、職業指導、事業主への雇用管理のアドバイス等を行っています。 (3)障害者就業・生活支援センター 障害者の職業生活における自立を図るため、就業面と生活面の両方における一体的な支援を行う機関です。 引用:[職業リハビリテーションの実施]厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha/05.html 4.障害者を雇用する企業のメリット (1)障害者雇用調整金 常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で、法定雇用率以上の障害者を雇用している場合に支給されるものになります。 支給額は以下の通り、常用労働者の人数によって異なります。 ➡月額27,000円×超過人数分の調整金 (2)報奨金 常時雇用している労働者数が100人以下の事業主で、各月の雇用障害者数の年度間合計数が一定数(各月の常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数又は72人のいずれか多い数)を超えて障害者を雇用している場合に支給されます。 支給額は以下の通り、常用労働者の人数によって異なります。 ➡月額21,000円×超過人数分の報奨金 (3)助成金 障害者に雇用する場合に発生する特定求職者雇用開発助成金や職場定着の措置を実施した場合に発生する障害者雇用安定助成金などがあります。 他にも多くの助成金がありますので下記のリンクをご参照ください。 引用:[障害者を雇い入れた場合などの助成]厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/intro-joseikin.html 5.障害者を雇用しなかった場合 (1)障害者雇用納付金 常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で法定雇用率を達成していない場合、下記の障害者雇用納付金が徴収されます。 納付金の額=(法定雇用障害者数-雇用障害者数)の各月の合計数×月額50,000円 またこの納付金は障害者雇用の義務を果たしている企業と果たしていない企業の経済的な負担を調整するために支払うものであり、「罰金」ではありません。 (2)改善指導が入る ハローワークより「障害者の雇入れに関する計画」の提出が求められます。 それでも改善が行わない企業に対しては、企業名の公表を前提とした労働局・厚生労働省からの行政指導が入ることがあります。 (3)企業名が公表される 行政指導が入っても雇用状況の改善を行わない場合は、企業名が公表されてしまいます。 障害者雇用に取り組んでいない企業として、企業名やその状況が公にされることは、企業の社会的責任を果たせていないことを示すこととなり、社会的信頼を低下させてしまいます。 6.その他の制度 (1)認定制度 障害者の雇用の実施状況などが優良な中小事業主(常時雇用する労働者が300人以下)を厚生労働大臣が認定する制度で、優良事業主に認定されるためには、厚生労働省が定めた認定基準を全て満たす必要があります。 認定事業主となることのメリットとしては以下があります。 障害者雇用優良中小事業主認定マーク(愛称:もにす)が自社の商品や広告などに使用できる。 働き方改革推進支援資金における低利融資の対象となる。認定事業主の情報は、厚生労働省及び都道府県労働局のホームページに掲載され、社会的認知度を高めることができる。 引用:[障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)]厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/monisu.html (2)特例給付金制度 週10時間以上20時間未満で働く障害者雇用を行った場合に対し、従業員数に応じた支給額が支給される給付金です。 具体的な支給額等は下記をご参照下さい。 引用:[特例給付金の支給要件等について]厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000535730.pdf まとめ いかがだったでしょうか? 「障害者雇用」は着実に広がりつつあるものの、未だ前向きに検討できない事業主様は数多くいらっしゃいます。まずは、自社の障害者雇用率と実雇用率を把握し、受け入れ態勢が整っているかどうか、整っていなかった場合、配属先や受け入れ体制、採用手法などを見直し・検討されてみてはいかがでしょうか? 上に戻る |